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THE ALFEE 高見沢俊彦さんが現代の民話を創作!? 「海ノ民話アニメーション2024完成披露イベント」特別トークショーを開催

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2025年4月7日

一般社団法人日本昔ばなし協会と日本財団が取り組む「海ノ民話のまちプロジェクト」は、2025年3月29日(土)、銀座 蔦屋書店(東京都中央区)にて、2024年度に制作した「海ノ民話アニメーション」の完成披露イベント特別トークショーを開催しました。
昨年デビュー50周年を迎えた人気ロックバンド「THE ALFEE」のリーダーであり、神話や歴史をテーマにした小説も手がける高見沢俊彦さんを迎え、民謡研究家の佐藤千春さんとともに、海ノ民話の魅力やその伝承・活用、新しい「海ノ民話」の創作についてそれぞれの視点から語っていただきました。

海ノ民話アニメーションから民話の魅力と背景を学ぶ

この日のトークショーは、「海ノ民話のまちプロジェクト」の紹介ムービーの上映と、2024年度の成果報告からスタート。全国各地に伝わる25本の「海ノ民話アニメーション」の完成を発表し、昨年度までに制作した67本と合わせて合計92本がYouTubeで視聴可能になったことを紹介しました。

続いて、ゲストの高見沢俊彦さん(THE ALFEE)、佐藤千春さん(一般社団法人 民俗文化興隆協会)、ナビゲーターの海野光行 常務理事(日本財団)が登壇し、3人それぞれが印象に残った「海ノ民話アニメーション」をピックアップ。

高見沢さんは、同じ海で暮らしていた貝どうしの争いの結末を描いた北海道函館市の民話「ムイとアワビの合戦」を挙げ、「絵がとても気に入った。温暖化への警鐘もあるし、神様がエサの取り合いをする生き物たちに対して、ノアの箱舟のように全滅させるのではなく、お互いにすみ分けをさせるということに、ほっこりとした気持ちになった」とコメント。
ムイとアワビの合戦(北海道函館市):https://uminominwa.jp/animation/68/

佐藤さんは、神社の成り立ちにまつわる言い伝えを描いた青森県青森市の民話「善知鳥安方(うとうやすかた)」を紹介し、「農村の暮らしが丁寧に描かれていて、特に水車を足で踏んで動かすシーンが印象的。アニメだからこそ直感的に伝わりやすい。」と、民謡「水車の水踏み歌」の一節を交え披露しながら語りました。
善知鳥安方(青森県青森市):https://uminominwa.jp/animation/69/

海野常務は滋賀県近江八幡市の民話「観音正寺の人魚伝説」を選び、「琵琶湖から水路でつながる西の湖のお話。舞台は湖であるが、資源管理がテーマの作品で、現代にもつながる。改めて考えさせられた。人魚と聞いて美女のイメージを持っていたが、このアニメに出てくるのは、おじさんの顔を体は魚の人魚。意外性が面白いアニメ。」と述べました。
観音正寺の人魚伝説(滋賀県近江八幡市):https://uminominwa.jp/animation/81/

民話と音楽/民話と民謡の関係性について語る

高見沢さんは、THE ALFEEの1980年頃のツアー「フォークソング紀行」で、公演先を訪れては図書館に足を運び、調べた民話をもとにその土地だけの楽曲を作っていたエピソードを明かしました。当時、実際に使っていたノートの中から、北海道乙部町が舞台の、海にまつわる歌詞を披露。地域の民話と音楽を結びつける活動をしていた高見沢さんに、海野常務は「音楽と物語が結びつくことで、記憶に残りやすくなる効果があると思う」とコメントしました。

続いて、佐藤さんは民謡の影響を受けて発展した盆踊りについて触れ、最近気になる盆踊りとして、THE ALFEEが2024年にリリースした「メリーアン音頭」を振りを交えながら紹介。楽曲ができた背景について高見沢さんは、「お祭りをすると神様が喜び、喜ぶと神様の力が増す。そして、僕らがお祈りをして徳をもらうという相互関係が生まれる。なので、メリーアン音頭で神様を元気にして、僕らも神様から元気をもらって、10年20年30年と、できる限り長くバンドを続けていきたい」とTHE ALFEEとしての意気込みも含めて語りました。

佐藤さんは、「民謡は暮らしや文化と結びついている。民話も民謡も口承・口伝えで、時代や語り手によって変化をしながら伝えられてきた。メリーアン音頭も日本の民謡として受け継がれていくかもしれない」と、日本の伝統音楽の可能性について述べました。

現代の新しい海ノ民話を創作する

トークショーの最後には、「現代だからこそ生まれる海ノ民話」についてディスカッションを展開。海野常務が「昔の民話は、海の恵みや自然の神秘がテーマになることが多かったが、今なら海洋ごみや海水温の上昇、海洋生物の絶滅危機など、現代の課題がある。一方で移動手段が増え、遠い海にも気軽に触れられる、水族館で世界中の海の命に出会えたり、無人運航船のようなテクノロジーも登場している。そうした新しい関わり方から生まれる物語も楽しみ。さらに、変わってきたものもありながら、変わらないものもある。」と話し、こういったものを取り混ぜていくことが、新しい民話の作り方なのではと提起。それに応えて高見沢さんと佐藤さんが、それぞれ創作した新しい海ノ民話のストーリーを披露しました。

高見沢さんの新しい海ノ民話「カモメのケジメ」
ストーリー:海岸で暮らすカニすけはいつも海鳥たちにいじめられていた。あるとき怪我をしたカモメのひなが海岸に落ちていたが、そのひなをいじめ返すのではなく、「カモひこ」と名づけて、海洋ごみとして流れ着いたお城のおもちゃを巣にして、カニ総出で守り育てていった。カモひこの怪我が治り、巣立っていったある日、カニすけがアホウドリに襲われそうになっているところ、カモひこが助けに入り『ケジメ』をつけるという、心温まる恩返しの話。

佐藤さんの新しい海ノ民話「かえってきたおすし」
ストーリー:昔にぎわっていた港町の寿司屋から、海の変化により寿司ネタが減ってしまった。「お寿司節」という民謡を歌いながら、町の人が海をきれいにする活動を行い、少しずつ寿司ネタの種類が戻ってくる。日々の小さな行動が、海を変えていくという思いを込めた話。

海野常務はお2人の海ノ民話を絶賛。司会からの「お2人が考えてくださった海ノ民話は、ぜひ見てみたいですよね!」との声に、会場からは拍手が起こりました。また、海野常務から高見沢さんへ「民話とともに、音楽も作ってもらえたら。」という要望に、高見沢さんが「もちろん!」と快諾する一幕もあり、大いに盛り上がりました。

最後に

海ノ民話のまちプロジェクト2024年度の集大成として、「海ノ民話の価値の再発見」と「海ノ民話の価値の創造」をテーマに、13人の研究者による15の寄稿を収録した研究紀要「海ノ民話学ジャーナル創刊準備号」の発刊を発表後、登壇者の皆さんから感想をいただきました。

<登壇者のコメント>

高見沢俊彦さん
創作が大好きで、曲も小説も書いているが、登壇者の皆さんのお話を聞いて、民話をもとにした物語を作ってみるのも面白いと思った。連載中の小説が終わってからチャレンジしてみたい。

佐藤千春さん
アニメーションにすることでわかりやすく、子どもたちにも伝わりやすい。アニメの力が溢れていると感じた。皆さんから多角的なお話を聞けて充実したとともに、改めて海のことを見つめ直す良い機会となった。

ナビゲーターの海野常務は最後に、ゲストのお2人への感謝を伝えるとともに、「各地の海ノ民話を集めていると、正直何を伝えたいのかがわからない話もある。意味がわからないものを目の当たりにしたとき、私たちは自分なりの解釈で考える。その『考える』という行動が大事で、これらの民話が考えるきっかけを与えてくれているのだとすると、私たちはその民話をどう良い形にしていくのか、どんな学びを込めて世の中に広めていくのかを模索しながら展開していく。先人たちに試されているという思いで、今後もこのプロジェクトを推進していきたい」と話しました。

さらに、2025年度にも25本の海ノ民話アニメーションを制作することを発表し、「単なる昔ばかしとして楽しむだけでなく、先人たちの知恵や思い、海との向き合い方をどう受けとるのかというところに、私たちへのヒントが隠されている。考えることを続けてほしいし、私たちもこれを続けながら新しい海ノ民話を作っていきたい」と、イベントを締めくくりました。

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