日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

ニュース・お知らせ

地元の小学生にとっても宝物の島が舞台!「虻が島の大蛇」が完成

作品公開
2023年3月28日

2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話15作品を映像化。そのうちのひとつとして、富山県氷見市に伝わる民話をもとにした「虻が島の大蛇」が完成しました。

このお話は、富山湾に浮かぶ「虻が島」が舞台。今よりもっと大きかったこの島は、かつて「蛇が島」と呼ばれていました。北国や南の島に咲くような珍しい花が一緒に咲き、たくさんのいきものが暮らしているこの島の中央には、真水が湧き出す泉がありました。この泉は、虻が島のすぐそば、能登半島の石動山にある蓮池と繋がっているのだと人々は信じていました。
この蓮池には、大蛇の夫婦が棲んでいて、夏になると子ども達を引き連れて、泉で繋がっている虻が島に遊びに行っていたそうです。
そんなことを知らずに、ときどき島に舟をつける者がいると、大蛇が怒り、海が荒れると言われていました。そんなあるとき、漁をしていたひとりの若者が、虻が島の美しさに惹かれ、どうしても島へ行ってみたくなりました。「長老たちはあの島へ行くなと言うが…。なぁに、少し寄るくらいはいいだろう」と、若者が島に上陸すると、そこは若者が見たこともない植物がたくさんあり、真夏でも涼しいという夢のような場所でした。

夢中になった若者は、長老たちの言葉をすっかり忘れ、薮をかき分け、島の奥へと足を進めます。島の中央にある泉にたどり着いた若者は、そこで遊んでいた5人の子どもたちの姿を見つけます。若者に声をかけられても、黙っているばかりの子どもの手にドジョウがあるのを見つけた若者は、泉が真水であることに気づき、乾いたのどを潤そうと泉へと足を進めます。若者の行動に驚いた子どもたちは、次々と蛇に姿を変え、あっという間に泉の中に飛び込みます。若者もその様子に驚いていると、たちまち空へ真っ黒な雨雲が広がり、泉から大蛇が姿を現します。

「お前は一体何をしにここへ来た?」「わしらの子どもに手を出したら、ただでますまさん。今すぐ島を出て行け!」と大蛇の夫婦に怒られ、嵐の中、大慌てで若者が島を離れると、空には虹がかかり、海も穏やかに。

そんなことから人々は、この島を「蛇が島」と呼ぶようになりましたが、時が経つうちに島は波に浸食されて小さくなり、泉もほんの一部を残してなくなってしまいました。海水を嫌う大蛇たちは、亀に姿を変えて富山湾の海の底へと潜っていきました。こうして蛇のいなくなった島は「虻が島」と呼ばれるようになったそうです。

お話の舞台となる虻が島は、富山湾最大の島であるだけではなく、さまざまな植生の植物と、そこに共生する昆虫類など、特殊な生態系が構築されています。貴重な自然を守るために、県の天然記念物に指定するなど、官民一体の丁寧な保全活動が行われています。そんな虻が島にまつわる民話をアニメ化した「虻が島の大蛇」の完成上映会が、2023年3月3日に氷見市立灘浦小学校にて、4~6年生を対象に行われました。
地元の子ども達にとって、虻が島は小学校の清掃活動でしか立ち入ることのできない特別な場所。そんな身近でもあり、守るべきものでもある島を舞台としたアニメを通して、虻が島の特徴や自然、富山湾の漁業について学んで欲しいと、氷見市立博物館 館長・大野 究さんと主査 廣瀬 直樹さんを講師に招いての授業「虻が島の特徴や自然、富山湾の漁業について学ぼう ~虻が島の大蛇から学ぶ 自然・漁業について~」も併せて行われました。
参加した子ども達からは「私たちの宝物の虻が島をアニメを通じて、いろいろな人に知ってもらいたいと思った」「昔、虻が島はとても大きい島だったことを知った」「民話になるような歴史がある島のことを多くの人に知ってもらいたい」など、さまざまな感想を聞くことができました。

このアニメは、2019年度認定作品「一里島」も手掛けたアニメーターのふくだるなさんが、キャラクターデザイン、絵コンテ、演出、作画、美術、背景、色彩設計と、多くのポジションをお一人で担当されました。絵本のような鮮やかで美しい色彩と、可愛らしいキャラクターデザインによって、虻が島をめぐる民話がさらに印象深いものとなっています。アニメでも描かれた豊かな自然が残る島をこれからもずっと守っていくためにも、多くの皆さんに「虻が島の大蛇」を観ていただけると嬉しいです。

share