心優しい女神様が旅に! 山口県岩国市に伝わる民話「海の姫宮の旅」がアニメ化!
2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、山口県岩国市に伝わる民話「海の姫宮の旅」が選ばれました。
舞台となるのは、今も航海の難所として知られる瀬戸内海。天照大御神より生まれた神様・市杵島姫(いちきしまひめのかみ)は、福岡県宗像市にある宗像大社辺津宮から、海の安全を見守っていました。しかし、日本という国が発展し、海を行き交う船が増えるなか、速い潮流や渦潮などによる事故によって、瀬戸内海上で命を落とす者が多いことを知ります。瀬戸内海を見渡すことができる島に宮を築き、船の安全を祈ることにした市杵島姫は舟に乗り、宮を建てるにふさわしい場所を探す旅に出ました。
関門海峡を通り、下関を越え、周防灘を抜けて瀬戸内海に到着した市杵島姫ですが、大荒れの海は、今まで転覆してきた漁船と同じように市杵島姫が乗る舟も翻弄します。舟旅の大変さ、そして舟乗りたちの苦労を知った市杵島姫は、再びおだやかさを取り戻した海を進み、麻里布の浦で帆を下ろし、旅の疲れを癒すことにしました。
化粧を施し、より美しい装いとなった市杵島姫は浜に戻り、辺りを見回します。すると、虹色に輝く瑞雲が安芸の宮島の弥山にたなびいていました。その美しい雲を吉兆ととらえた市杵島姫は、島に宮を構えることに決めました。やがて、その宮は現在の厳島神社となり、市杵島姫は今も日本の海の安全を見守っているのです。
※諸説あり。
2022年6月、この「海の姫宮の旅」の舞台となる岩国市を海ノ民話のまち実行委員会認定委員長でもある沼田心之介監督が訪れ、岩国徴古館や観光協会の皆さんとキックオフミーティングを開催。「『衣掛松』や『鏡岩』『紅岩』といった、市杵島姫が旅路で立ち寄ったという言い伝えが残るスポットや多くの史跡を表現してほしい」「今後、地元の地区保存会などとも連携しながら盛り上げていきたい」といった意見などを聞くことができました。
また、ロケハンでは、岩国徴古館副館長の松岡智訓さんの案内で、装束地区の「衣掛けの松」や装束寺など、ゆかりのスポットを訪問。市杵島姫にまつわる伝説が、今も岩国市の皆さんから愛され、大切に受け継がれていることを実感したようです。
翌月には「海ノ民話のまち」認定証贈呈式が行われ、福田良彦市長は「山口県初の認定という事で非常に光栄です。日本は海洋国家、山口県も三方を海に開かれており、岩国市も海と共に栄えてきました。美しい海の恩恵に感謝しながら未来につなげていくのが我々の責務です。今回のアニメ化をきっかけに、歴史を守り伝えながら、郷土愛の醸成、ひいては地域の活性化につなげていきたいと思います」と述べました。
航海安全と商人の商売の守護神として祀られてきた市杵島姫。その美しさと人々への深い愛情を見事に表現するアニメーションとなる「海の姫宮の旅」。完成は2022年冬を予定しています。どのような作品になるのか、楽しみですね。