滋賀県大津市に伝わる民話を再構築!「琵琶の名手と水の姫『逢坂の関清水 蝉丸物語』」をアニメ化!
2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、滋賀県大津市に伝わる民話を再構築した物語「琵琶の名手と水の姫『逢坂の関清水 蝉丸物語』」が選ばれました。
地上に海と空しかないほどの昔。竜宮城に暮らす水神の娘・豊玉姫は、各地の水を通して世界の様子を見ていました。今から1300年前ほどの時代、交通の要所であった近江の国の「逢坂の関」では、訪れる人の多くが湧水池で体を休め、清い水に旅の安全と家族の安寧を祈っていました。豊玉姫は、旅人の願いが多いことから、他の神の力も必要だと考えました。カメの姿に変身した姫は、途中で魚やウナギに道案内をしてもらいながら、琵琶湖を北上し、湖中に鳥居を構える白髭神社に行き、道の神・猿田彦に相談。すると、猿田彦は使っていた杖を化身として姫に授けました。そうして逢坂の関には水の湧く麓に、豊玉姫を祀る「関清水大明神」が、逢坂山には「猿田彦」を祀る「関大明神」の社が建てられ、旅人らを見守り続けました。
それから100年以上経ったのち、逢坂山に連日、琵琶の音色が響くようになりました。豊玉姫は琵琶の音色に水の音、波の音を感じ、とても気にいっていました。その音色を奏でていたのは、盲目のため都を追われた平安時代前期の歌人・蝉丸でした。蝉丸は僧侶として逢坂山の藁屋に住み、行き交う人々に思いを馳せながら、毎日琵琶を弾き続け、旅人らはその音色に癒され、励まされていました。蝉丸の死後、豊玉姫は再び白髭神社の猿田彦の元を訪れ、人々の心を清らかにする音曲の大切さを訴えました。猿田彦はその通りだと同意して、音曲芸能の祖神として蝉丸を祀ることを認めました。こうして逢坂山の社は関蝉丸神社として、水の神・豊玉姫と、道の神・猿田彦、そして芸能の神・蝉丸の3柱が祀られることになりました。関蝉丸神社は今でも、芸能の祈りを捧げる人が訪れ、この地に音色を響かせて人々の暮らしの安寧を願っています。
2022年6月、「琵琶の名手と水の姫『逢坂の関清水 蝉丸物語』」の舞台となる大津市を沼田友之介チーフアニメプロデューサーらスタッフ陣が訪れ、観光協会をはじめとする地元の皆さんとキックオフミーティングを開催。「市に伝わるいろいろな資料をひとつの民話にまとめた物語となること」などについて、さまざまな意見が交わされました。その中で、地元の皆さんからは「蝉丸神社の創祀1200周年記念行事にからめて、盛り上げたい」「こちらで企画した琵琶の音源があるので、ぜひ使ってほしい」といった声が上がっていました。
その後のロケハンでは、関蝉丸神社や琵琶湖へと足を運び、民話が生まれ育ち、愛され続けている風景を写真に収めていました。
また、8月には沼田かずみゼネラルプロデューサーをはじめとする事務局メンバーが市を再訪し、「海ノ民話のまち」認定証贈呈式を実施しました。この席で、佐藤健司市長は「この度は大津市が海ノ民話のまちに認定され嬉しく思っています。海のない大津市ではありますが、琵琶湖は多くの市民に親しまれ、豊かな歴史を誇ります。民話を通して、子どもたちに地域の歴史や自然をアニメーションで分かりやすく伝えていく『海ノ民話のまちプロジェクト』に敬意と感謝を申し上げたいです。子どもたちに、大津市の豊かな歴史や文化をしっかりと受け継いでもらうためにも、民話アニメーションを通じて大津市への誇りと愛着が生まれることを期待します」と述べました。
絵本のように美しい映像で綴られる豊玉姫の大冒険と、蝉丸が奏でる味わい深い琵琶の音色が一度に堪能できるアニメ「琵琶の名手と水の姫『逢坂の関清水 蝉丸物語』」。2022年冬に予定されている完成を楽しみにしていてくださいね。