高知から伊豆へドンブラコ…。高知県須崎市に伝わる民話「八幡宮の神輿」がアニメ化!
2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、高知県須崎市に伝わる民話「八幡宮の神輿」が選ばれました。
舞台は江戸時代。現在の高知県須崎市西古市町にある須崎八幡宮は、鎌倉時代には創建されていた歴史の長い神社ですが、宝永4年10月4日(1707年10月28日)の際に発生した津波によって水没したそうです。
とても大きな津波にのみ込まれた須崎八幡宮は水深4メートル以上となり、社の大部分は水没し、倒壊しました。このため、神社のおみこしが潮の流れに乗って太平洋を漂い、流れ流れて5日目となる10月8日に、静岡県は伊豆の岩地に打ち上げられました。
遠くの須崎八幡宮から流されてきたものだと知った伊豆の村人と神官によって、おみこしを丁重にまつり、保管していました。もし、須崎八幡宮がこのことを知ったとしても、津波による大きな痛手を受けており、数百里も離れた伊豆までおみこしを受け取りに行くことは困難だったでしょう。
そんな中、安田浦の廻船業の長左衛門が須崎八幡宮のおみこしが伊豆に流れ着いたことを聞き、伊豆を訪れた際に「みこしを須崎にお返し願いたい」と申し入れました。村人と相談をした神官は、おみくじにより神意をお伺いしたところ「ご帰国したい」というお告げが出たそうです。
そこで長左衛門は、別れを惜しむ村人や神官の了承を得て、船にみこしを積み込み、高知へ。みこしが正式に受け入れ奉納されたのは、その年の9月11日のことだったそうです。
※諸説あり。
2022年6月、この「八幡宮の神輿」の舞台となる須崎市を沼田かずみゼネラルプロデューサーをはじめとする事務局メンバーが訪れ、「海ノ民話のまち」認定証贈呈式を行いました。認定証を受け取った楠瀬耕作市長は「今回の海ノ民話のアニメの中に、須崎の八幡宮の神輿を選んで頂き、本当に光栄です。ありがとうございます。須崎市は昔から港を中心に栄えた町なので海にまつわる昔話がたくさんありますが、そのなかで今回のお話は非常にスケールの大きい話なので、これを活かして『海のまち須崎』をもっと磨き上げていきたいです」と笑顔で語りました。
その後、須崎市の皆さんとキックオフミーティングも開催。完成した絵コンテを元に、シナリオ構成などについて意見交換が行われ、地元では「メジカの新子」などと呼ばれるソウダガツオの生後一年未満の幼魚や、市内を流れる「新荘川」で、1979年(昭和54年)に、全国で最後に生息が確認されたニホンカワウソといった、同市に縁のある名産品や動物を登場させて欲しい、といった、須崎市に暮らす皆さんならではの意見も飛び出していました。
また、事務局メンバーは物語の舞台となる須崎八幡宮に足を運び、歴史を感じさせる社殿や、夏に行われる「須崎まつり 海上花火大会」の会場としても知られる富士ヶ浜などを訪れ、太平洋をのぞむ風光明媚なロケーションをその目に焼き付けていました。
宝永地震津波により700km以上離れた伊豆まで流され、豊漁をもたらしたというおみこし。人々の暮らしに甚大な被害を与える自然現象も、地球規模の生命の営みにおいては恵みをもたらすこともある、といった大きな視点を私たちに教えてくれる高知県須崎市の海ノ民話「八幡宮の神輿」のアニメは、秋~冬の完成を予定しています。どのような物語になるのか、今から完成が楽しみですね。