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大分県佐伯市で「佐伯の船霊さま」の上映会・フィールドワークを実施

活用イベント
2025年2月14日

一般社団法人日本昔ばなし協会は2025年2月12日(水)、大分県佐伯市に伝わる民話を題材にした海ノ民話アニメーション「佐伯の船霊さま」の上映会・フィールドワークを大分県佐伯市の佐伯市立蒲江翔南学園で実施しました。

「佐伯の船霊さま」は、船が難破して知らない土地に流れついた漁師たちが船の守り神「船霊さま(船を新造したときに納める神さま)」を取り出し、村人たちにお世話になろうと、船霊さまのご神体をかけて勝負を挑みますが、負けて村のために一生懸命働く――という物語。

今回は、佐伯市立蒲江翔南学園の授業として実施し、在校生約140名が参加しました。上映前に民話「佐伯の船霊さま」の語りべである橋本さんより「タカラガイ」を用いて作った子供の遊び道具が紹介され、子供たちは興味津々にのぞき込んだり、触ってみたりして漁師町ならではの遊びを知ることができました。

上映後、多くの子供たちが元気よく手をあげて「漁師さんたちが働き者ですごいと思った」など、思い思いの感想を述べていました。橋本さんは、民話アニメに登場する「バクチの木」は願掛けをするような御神木の役割をしており、佐伯市蒲江に住む人々にとって大切なシンボルであることを伝え、海ノ民話のまち実行委員会の古田さんは、「民話『佐伯の船霊さま』は命がけで海を行き来する漁師たちが生きていくための知恵を語ったお話であり、このような民話を生んだ佐伯市蒲江に生まれ育ったことを誇りに思ってほしい」と子供たちに語っていました。

上映会に続いて、佐伯市教育委員会社会教育課の清家さんを講師に招き、民話の舞台となった佐伯市の海と漁師の文化についてご講演いただきました。

今回の民話の軸となっている「船霊信仰」が生まれた背景は、船大工が新しく船を造る際、大漁祈願や航海安全を目的として船の操舵室に船霊さまを載せたことが始まりであること、「船霊信仰」がだんだん薄れてしまった理由として、造船技術の進化により船の素材が木から強化プラスチックに変わったことや、GPSの装備によって遭難が減ったことがあげられることを説明。各地から佐伯市蒲江にやってきた人々についても触れ、海の幸を求めてやってきた一族や漁の技術を伝えにきた一族のほか、戦を逃れてやってきた一族もいることを教えていただきました。ほかにも、干支を用いた方角や時間の表し方を伝え、子どもたちは、とり舵の由来が西を表す「酉(とり)」からきていることを知り、普段聞き馴染みのない航海用語が出るお話に真剣なまなざしで聞き入っている様子でした。

参加者からは「佐伯の船の中に船霊さまがいることや、バクチの木があることを初めて知った。」「今まで民話に興味がなかったけど、アニメを観たことで興味がわいた。家に帰って調べてみたいと思う。」「ごみを捨てないようにして蒲江の海を守っていこうと思った。」といった声が寄せられました。

海ノ民話アニメーション「佐伯の船霊さま」

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