山口県田布施町で「ゆき姫物語」の上映会・特別授業を実施

一般社団法人日本昔ばなし協会は2025年2月10日(月)、山口県田布施町に伝わる民話を題材にした海ノ民話アニメーション「ゆき姫物語」の上映会・特別授業を田布施町立麻郷小学校で実施しました。
山口県田布施町の海ノ民話アニメーション「ゆき姫物語」はこんなお話▼
ある夜、渡し守の久左衛門(きゅうざえもん)の寝間に突然現れた娘・ゆきが不思議なことを語りはじめました。自身が今、刎島沖の海の底にいるというのです。そしてゆき姫は久左衛門に三つのお願いをしました。一つ目はゆき姫の遺髪と櫛を父親に渡してほしい、二つ目は遺髪を許嫁に、三つ目の願いはお墓を刎島の頂きに建ててほしいというものでした。哀れに思った久左衛門は、翌朝、ゆき姫がいるという刎島沖へ船を出し、網を入れると…
麻郷小学校に通う5・6年生を対象とした特別授業として行った上映会には、児童43人のほか、新聞などで実施を知った地元の方約10名も参加されました。
最初に「海ノ民話のまちプロジェクト」の趣旨説明の後、「ゆき姫物語」を上映。上映会後には、アニメの制作にかかわった方たちのお話を聞き、「ゆき姫物語」についてさらに理解を深める時間となりました。
田布施地方史研究会の林芙美夫会長からは、この物語は約600年前の室町時代の話であることや、アニメにするときに、お話の時代に合った衣装、言葉遣い、登場する場面の背景などに気を使い、海とともに生きてきた馬島の人々の歴史が伝えられるように配慮したというお話を伺いました。
また、田布施町紙芝居の会の平井洋子会長には、「ゆき姫物語」を紙芝居で演じてもらいました。アニメでは触れられていない、より細かな内容も語られ、その違いを楽しんでいるような子どもたちもいました。平井会長によると、田布施町の紙芝居は「ゆき姫物語」を含め全部で36作品あるそうです。先人たちの思いや教訓、言い伝えなどを語り継ぎ、次世代につなげていきたい、そして方言や昔使われていた道具なども伝えていきたいと思い紙芝居を上映されているそうです。「ゆき姫物語」のアニメからは、きれいな穏やかな海にも人を飲み込むような恐ろしい一面があることや、久左衛門のように何人に対しても包み込むような優しさ、そして物事に対して引き受けたら最後までやり通すことの大切さを学んでほしい、と話してくださいました。

監督のコメントを聞いて新たな発見が…
授業では、アニメ監督の沼田心之介のコメントも紹介されました。
<アニメ監督の沼田心之介コメント>
「麻郷小学校の皆さん、今回の「ゆき姫物語」のアニメいかがでしたでしょうか?
この田布施町に伝わる民話ですが、知っている方も知らない方もこのアニメを見ていただいて、色々な海の学びを得てもらえばと思います。このお話は、海ノ民話の中でも、海の恐ろしい一面を描いており、強烈なインパクトがあったかと思います。また一方では、ゆき姫の願いを叶えた久左衛門が、お礼を元手に海のビジネスを成功させたという、現実的な教訓も含まれています。そんな民話がデフォルメされたアニメーションの描写によって全体的に何とも言えないミステリアスな雰囲気に仕上がったと思います。
アニメの裏話としては、アニメの制作にあたり、舞台の馬島を訪問したのですが、その時に、馬島のてっぺんあたりがまるでブロッコリーのような形に見えたので、アニメでもブロッコリーのような木を描いています。このアニメはYouTubeでも見ることができるので、今日見ていないお友達やご家族にも、こういうお話があるよということを伝えていただけたら嬉しいです。」
コメントを聞いた後、最後にもう一度「ゆき姫物語」を見て、ブロッコリーの木をみんなで確認しました。

参加者の声
・アニメになると分かりやすかった。
・海のきれいさと怖さを知ることが出来た。
・馬島(物語の舞台となった場所)に行ってみたいと思った。