日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

インタビュー

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フルカラー3Dプリンターの第一人者が
「海ノ民話」に提示する新たな可能性とは

合同会社吉本アートファクトリー代表
一般社団法人日本3D教育協会代表
吉本 大輝
よしもと だいき
1995年生まれ、兵庫県出身。3D技術を用いた造形・設計・映像・XRなどのデザイン・ソフトウェア開発を得意としている。近年3D教育にも力を入れ、日本財団 海と日本プロジェクトと連携した最新の3D技術を活用した中学生向けの3D研究プログラム「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」を実施している。

数年前よりブームとなった3Dプリンターは、指定された3Dデータを基に立体的な造形物を作り出す機械だ。最近では金型造型に変わる製作機械として注目されている。また、比較的安価なものも発売されているので、独自にフィギュアを作るといった趣味的要素で購入する人も増えている。兵庫県三田市で3D関連(3Dデータ作成・3Dプリンター出力・3DCAD設計)の事業を行っている合同会社吉本アートファクトリー代表の吉本大輝さんに、3Dプリンターの利点や現状に関して伺った。

平面の魅力を立体物に落とし込むことを重視 フルカラー3Dプリンターを活用し美術館とも連携

まず3Dプリンターについて教えてください。

3Dプリンターには、さまざまな方式や種類があります。安価で、一般の方に馴染みがある3Dプリンターは、フィラメントタイプのFDM(熱溶解積層法)と呼ばれるものです。フィラメントと呼ばれるパスタ状の細く長い材料をプリンターの中に送り込み、それを溶かして麺状にして、どんどん重ねて最終的な形にします。

そのほかには、光造形という、いわゆるフィギュアや工業製品、プラモデルの元になるモックアップなどを作るときに使う、精度が高いものがあります。先ほどのフィラメントタイプだと、どうしても層が残ってしまうのですが、それを残さないように作ることができます。紫外線を照射しながら、一層一層重ねていき、形を作るプリンターです。

そして僕が現在ビジネスで使用しているのが、フルカラー3Dプリンターです。フィラメントタイプは着彩ができないものがほとんどですが、フルカラー3Dプリンターの場合、材料の色がそのまま出るんです。しかしフルカラー3Dプリンターは、データ入力した色が、そのまま出力品にも反映されます。フルカラー3Dプリンターの仕組みとしましては、インクジェットという方式になります。まさに家庭用のインクジェットプリンター同様、様々なインクのカートリッジを使うことで、1000万色以上が再現できます。

3Dプリンターは、工業用製作機械に近いイメージでしょうか。

確かに中にはとても大きなものであったり、数千万円するものもあります。一方、安価なもので言えば、フィラメントタイプなどは数万円で入手できるものもあるんですよ。

アニメーションのキャラクターなど、元々2Dであるものを3D化するには、多くの苦労があると思います。吉本さんが注意している点などを教えてください。

アニメやマンガとはいえ、多くのキャラクターは「人」をベースにしていますよね。だからデッサン的かつ解剖学的に見ても正しいものを作ることを意識しています。

そしてもう一つ、僕自身がとても重要視していることがあります。それは立体物になった時、どの方向から見ても魅力的なものにすることです。絵は基本的に一方向から見ることしか想定していませんよね。それをそのまま立体化すると、別アングルから見た時に魅力がなくなることがあるんです。それを払拭し、さまざまな方向から見て楽しめるよう、自分なりに課題意識を持って取り組んでいます。

フルカラー3Dプリンターで作るキャラクターとして、民話や昔話の登場人物は魅力的でしょうか? また、フィギュアビジネスとして考えるとどうですか?

魅力的だと思いますよ。平面で魅力的なものは、立体物にしても魅力的になると思います。
現在のフィギュア市場の売れ筋としては、美少女ものなどテレビの深夜枠で放送されているアニメキャラクターのフィギュアがあります。ただ、3000~10000体ほど完売するものでないと利益が出ません。つまり、売れ筋の人気コンテンツを持っていなければフィギュアビジネスができないという状況にあります。なぜかというと、金型を使うからです。フィギュアひとつずつに金型を作り、そのコストを回収するためには量産して、それが売れなければなりません。

吉本アートファクトリーは、違うのですか。

だからこそフルカラー3Dプリンターなんです。これならデータさえ作っておけば、受注したタイミングで作れば良いので、在庫を持つ必要がありません。最近の事例で言うと、香川県善通寺市にある灸まん美術館と連携して、和田邦坊という時事漫画やデザイナーとして活躍したアーティストの『成金栄華時代』という風刺画をフィギュア化しました。中学校の教科書にも掲載されていて、幅広い世代に知られる作品で、キャラクターとして可能性を持っていると思うのですが、金型を作ってフィギュアにして在庫を持つとなると難しい。でも、フルカラー3Dプリンターならできるね、ということで美術館と連携して取り組むことにしたんです。

なるほど、地域の民話のキャラクターでも同じような取り組みができそうですね。

たとえば地域の民話をアニメ作品に仕上げ、それを地元の人がしっかり見てくれて、「すごく面白いね」とか、「うちの地元にこんなキャラクターがいたのか」と言ってくれたとします。そして、「民話のアニメの一場面をフィギュア化しましょう」となったら面白そうですね。地域の人が100人くらいは買ってくれるかもしれませんし、お土産として話題になるかもしれません。その可能性はとても大きいと思います。そういう意味では、民話のキャラクターは『成金栄華時代』の成金おじさんに近いかもしれません。テイスト的にも向いているんじゃないでしょうか。

フルカラー3Dプリンターを使うことで、和風テイストの優しい色合いや複雑な色を出すことができるのも魅力だと思います。

そうですね。本当に意図した色が出せますからね。試作段階から最終的な商品と同じ色が出せるし、金型と違って調整がしやすいのも、フルカラー3Dプリンターの魅力なんです。

まとめ

フルカラー3Dプリンターは個別に色合いも調整でき、たとえばオーダーメイドカラーのフィギュアやオリジナルのグッズなども作成可能で、用途の幅は広い。在庫を持つ必要がないという点も魅力的だ。「海ノ民話のまちプロジェクト」アニメの情景やキャラクターをジオラマ風に再現する――そんな使い方もできるのではないだろうかという夢も広がる。今後のさらなる発展に大いに期待したい。

2023年2月6日公開、2024年3月19日再掲載
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