日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

インタビュー

01
ふるさとをもっと知り、もっと好きになれる
民話と民謡の共通点

海ノ民話のまちプロジェクトアドバイザー
民謡歌手
沢田 藍
さわだ あおい
「民謡の里」福島県南相馬市生まれ。1歳半で初舞台。3歳で民謡大会に初出場。史上最年少の4歳で「相馬流れ山全国大会(少年の部)」優勝。現在は民謡歌手として、舞台活動やレコーディング、民謡の普及活動・指導にも尽力。2019年「第48回全東北民謡選手権大会」優勝。全国大会優勝歴多数。

拠点とする福島県内のほか、東京都内や日本全国に活躍の場を広げてレコーディングや各種公演に参加している若手実力派民謡歌手、沢田藍さんに、民話と民謡の共通点についてお話を伺った。

民話が生まれた当時の情景に想いを馳せる

民謡の魅力を教えてください。

民話は庶民の話と言われていますが、民謡は私のなかでは大衆芸能です。盆踊りで民謡を聴いたことのある方も多いと思いますが、ほとんどが漁や田植えをしているときに唄う作業歌です。大漁や豊作を祝う唄や、農作業の苦労を感じさせるものあります。例えば、私のふるさとである福島に伝わる「原釜大漁祝い唄」。もともと鮪などを捕る角網漁が盛んな地域でもあったので、歌詞のなかにも大漁を祝う漁師の喜びがあらわれています。このように当時の情景に想いを馳せることができるということは、民話でも言えるのではないでしょうか。

子どもたちに興味をもってもらうにはどうしたらいいでしょう。

現代はデジタル技術が発達して、漁や田植えなど、民謡が生まれた当時のやり方はほとんど残っていません。「稲刈り、どうやるの?」「漁ってどんなもの?」そんなお子さんもいると思います。民謡に関しても、私たちの祖父母世代は聴いている方も多かったですが、今の子供たちの祖父母世代は聴いたことがない方も多いです。だからこそ、今のお子さんたちは、民謡は新しいものと認識している気がします。既成概念がない分、民謡がどのように響くかは私たち次第。そのために、まずは興味をもってもらう。唄ももちろんですが、和楽器、パフォーマンス、着物、SNS、動画など、興味の入り口はさまざまです。民謡のことを知ってもらうために、できることはたくさんある。その先に感じてもらえることがある。そう思っています。

民謡と民話とで通じるものはありますか。

北前船の船乗りたちによって海をわたり全国に伝わっていった民謡があります。熊本県の牛深ハイヤ節。この民謡は、船乗りたちが歌い継いだことで、日本中の港で広がっていき、40箇所以上の地域に根付いていったようです。民話に関しても、まったく別の地域で同じような物語が残っていることもあると聞きます。民話も民謡も、海や人とのつながりが深い。歴史の流れのなかでどのように関わってきたのか。とても興味深いです。

民謡にもCMソングがあったというのは本当でしょうか?

「相馬二遍返し」という民謡です。1782年の天明の大飢饉をうけて、相馬藩は復興のため他藩に移民を募っています。相馬は義理と人情が咲くいいところよと褒め称える宣伝歌と言われています。今でいうCMソングですね。

子どもたちに向けてメッセージをお願いします。

わたし達には、それぞれ生まれ育った「ふるさと」があります。あなたのふるさとの美味しいものは、なんですか? 海や川、山…そんな素敵な景色はありますか? ふるさとには、それぞれ異なる景色や歴史・文化があり、わたしは「民話」もそのひとつだと思っています。「民話」を通してあなた自身のふるさとをもっと知ることで、もっと誇れて、もっともっと大好きなふるさとになることでしょう。わたしが唄っている「民謡」も「民話」のように、地域によって異なる特色を持っています。民話や民謡を知ることで、ふるさとだけでなく、他にもたくさんの地域を知ることができますよ。ぜひ民話と一緒に、民謡も聴いてみていただけたら嬉しいです。

「海ノ民話アニメーション」で気に入った作品

大根明神のアワビ祭り

宮城県七ヶ浜町の「大根明神のアワビ祭り」は、大きなアワビが印象的で、「アワビ祭り」という地域の伝統文化に興味が湧きました。また、「海ノ民話」はそれぞれの物語によってイラストのテイストが違うことが新鮮でした。

2024年3月19日再掲載
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