日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

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怖さと海の学びが融合! 声優・四宮豪が語る「仏島」の魅力

作品公開
2023年3月23日

2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話15作品を映像化。そのうちのひとつとして、愛知県蒲郡市に伝わる民話「仏島」が完成しました。

このお話は、蒲郡市の沖合に浮かぶ無人島・三河大島の南側にある、仏島が舞台。このあたりは昔から、海面すれすれに顔をのぞかせる岩場が多く、船が座礁して死者が相次いだことから「船の墓場」「死者の海」と呼ばれていました。そんな昔のある日、兄弟の船乗りが対岸の村まで石塔を運ぶ仕事を引き受け、この近くの海を通りかかっていました。「重い荷物を運んでいるのだから、もう少し安全な岸の近くを進んだ方がいいのでは」という弟に対し、兄は「天気も良く、波も穏やかだから心配するな」と答えます。しかし、沖へ出てしばらくすると、急に空と海が暗くなり、それと同時に妙な潮の流れに捕まったのか、船はどんどん岩だらけの島へ引き寄せられていきます。

あっという間に島のそばまで流されると突然、船が傾き、荷物の石塔もろとも兄弟は海に投げ出されてしまいました。何とか海面に上がり、互いの無事を確認し合った兄弟は、島の岩に人影を見つけます。しかし、それは不気味な姿をした亡者で、兄弟に手招きをします。あまりの恐ろしさに必死に泳ぎ、気づくと浜辺に打ち上げられて兄弟は、高熱を出して寝込んでしまいましたが、仕事をしない訳にもいかず、再び海に出ることに。
前回の出来事を教訓に、岸の近くを進んでいたにも関わらず、またしても船は島へと流されます。また亡者に手招きされると思い、必死に念仏を唱える兄弟ですが、島の頂上に海中へと落ちたはずの石塔があることに気づきます。亡者たちが運んだのでは、と戸惑う弟に、兄は「きっと弔ってもらいたかったんだ。成仏できずに、ずっとここをさまよっていたんだろう」と亡者に心を寄せた二人は、村人たちにこの奇妙な出来事を伝え、皆でこの海で亡くなった人たちの供養を行いました。すると、不思議なことに島は日に日に低く、小さくなり、引き潮の時にだけ顔をだすほどになりました。そうして、座礁事故がなくなり、島も「仏島」と呼ばれるようになり、今も海の安全を見守るかのようにたたずんでいます。

今回、語りと、船乗りの兄を演じた声優の四宮豪さんに、作品から感じたことなどを語ってもらいました。

率直なお話のご感想をお聞かせください。

四宮「怖いですよね。とっても怖いお話なんですけども、潮の流れなどが原因で昔から海難事故が多い場所だったところに『怨霊や化け物が出るから、そこには近付かないように』といって危険から遠ざけたり、危機意識を持ってもらうという狙いがあったのかな、と思いますね。その中でも、恐がりながらも、きちんとご供養したり、拝んだりっていうところに、先人の海や自然への畏敬の念を感じますよね。島を『仏島』と呼ぶようになった、というところに、昔の人たちの思いが込められていると感じました」

印象に残っているアフレコ時のエピソードはありますか?

四宮「『このしろばあさん』というお話では、冨田さんがこのしろばあさんという怖いおばあさんを演じていたのですが、今回は僕が怨霊の『うええ』といううめき声も演じることになりました。『ちょっとやりましょう』と沼田監督に言われて、急きょ、アドリブで亡者も演じましたが、こういうのも面白いなって思いましたね」

「仏島」は、2020年度認定作品「速吸瀬戸の守り神」で美術・背景を担当した奥田一生さんが、キャラクターデザイン、絵コンテ、演出、作画、撮影、美術・背景、色彩設計と、ほとんど一人で制作しています。細やかに描き込まれた自然豊かな島々や海面で反射する繊細な陽の光など、注目すべき点はたくさんありますが、なかでも亡者が初登場したシーンでの、船乗り兄弟の視線と動揺を表現したカメラワークや、フジツボや貝などを貼り付けた亡者の恐ろしくも、どこか悲しく美しいデザインは、とくに魅力的です。

四宮さんの名演技と、奥田さんのこだわりに満ちた映像によって、多くの人々の記憶に鮮やかに残るアニメに生まれ変わった「仏島」。ぜひYouTubeの「海ノ民話のまちプロジェクト」チャンネルで楽しんで下さい。

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