美しい娘の正体とは…。福島県東白川郡鮫川村に伝わる「鮫川のサメ伝説『化身した黄金の鮫』」をアニメ化!
2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、福島県東白川郡鮫川村に伝わる民話、鮫川のサメ伝説「化身した黄金の鮫」が選ばれました。
昔々その昔、磐城国の東端の村に中野という長者夫婦が住んでいました。この夫婦には子どもがなく、どうにかして子どもが欲しいものと、氏神様に一生懸命祈願しました。やがて美しい女の子が生まれ、名前は紀美と名付けられました。やがて、十六歳を迎えた紀美の美しさはひと通りではなく、付近の人々はもちろんのこと、遠く岩代国の果てまでも評判になりますが、月日が経つに従って、紀美は妙にふさぎがちで、一日中、納屋の片隅ですすり泣くことが多くなりました。
やがて長者夫婦も娘の様子の変わったことに気づき、いろいろ手当てを加えましたが、紀美の容態は日一日と悪くなっていくばかりで、ついには床についたまま、死を待つありさまになってしまいました。
冬が来て、春となり、やがて夏になったある日、紀美は長者夫婦を枕元に呼んで、「どうか私が死ぬ前に、渡瀬にある大きな池を見せてください」と言いました。池に到着した紀美は、しばらく岸辺にたたずんでいましたが、何を思ったのか、いきなり身を躍らせて、大池の中へ飛び込んでしまいました。
供の者たちもあっけにとられる中、姿を変えた紀美が姿を現し、「皆様、よくお聞きください。私はもとよりこの池の主でしたが、何となく浮世に出てみたくなり、化身して中野の娘になりました。けれどもどうしてもこの池に帰らなければならない身の上です。皆様方には、ひとかたならぬ御世話になりました。この御恩は決して忘れません。どうかお帰りになったら、中野の父母にもこのことをよくお伝えください」と言い終わると、すぐ水中深くにその姿を消してしまいました。供の者たちは長者の家に飛んで帰り、この顛末を長者夫婦に申し語りました。
長者夫婦は愛する娘を失った悲しみと、ことの不思議さに驚き、嘆くばかりでしたが、やがて気を取り直し、今まで紀美が寝ていた床を調べてみると、そこには光まばゆい三片の黄金の鱗が落ちていました。
このことがあって以来、この池は鮫池と呼ばれるようになったということです。その後、長者の家は代々栄え、長者夫婦が世を去ると、紀美だった鮫は池を出て川を下り、竹貫、植田を通って、磐城の海に向かったそうです。人々はこの川を鮫川といい、村の名前もその川の名から鮫川村とつけたということです。
※諸説あり。
2022年6月、この鮫川のサメ伝説「化身した黄金の鮫」の舞台となる鮫川村を沼田友之介チーフアニメプロデューサーらスタッフ陣が訪れ、観光協会をはじめとする地元の皆さんとキックオフミーティングを開催。「鮫と村人との温かい絆をきちんと描いて欲しい」「鮫川小学校の1~6年生が使う『鮫川学』の教科書にも載せていきたい」といった声が上がっていました。その後、行われたロケハンでは、鮫川の源流となる山を訪れ、鮫池跡を見学。周辺の様子をカメラに収めていました。
また、9月には認定委員長をはじめとする事務局メンバーが村を再訪し、「海ノ民話のまち」認定証贈呈式を実施しました。この席で、関根政雄 村長は「昔話から学ぶことは多いため、アニメを通して青少年の教育活動にもつなげ、PRや行動にも活用していきたいです。鮫川村は海に面していない地域ですが、この海ノ民話のアニメを通して、海とのつながりを再確認することができると思います。きれいな川や海を未来につなげるために、これからも川の上流下流の上流部分として川をきれいにしていきたいです」と決意を新たにしていました。
県内1作目となった、いわき市の「いわき鮫川のサメ伝説」と同じく、「宇宙戦艦ヤマト」などで作画監督を務めたことでも知られるスーパーアニメーター・湖川友謙さんが制作を担当することとなった鮫川のサメ伝説「化身した黄金の鮫」。美しくもミステリアスな家族愛を描いた作品は、2022年冬に完成を予定しています。ぜひ、ご期待下さい。