日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

ニュース・お知らせ

無人島にある不思議な泉をめぐる物語…。富山県氷見市に伝わる民話「虻が島(あぶがしま)の大蛇」をアニメ化!

地域の話題
2022年9月15日

2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、富山県氷見市に伝わる民話「虻が島の大蛇」が選ばれました。

民話の舞台となる虻が島の向こうには富山を代表する絶景・立山連峰が

舞台となるのは、富山県氷見市中田海岸から1.8㎞の沖合に浮かぶ、富山県の名勝・天然記念物に指定されている無人島・虻が島。ここには、周囲が海に囲まれているのにも関わらず、淡水が湧き出る泉(井泉)がありました。昔、この泉の水は、富山県氷見市と石川県中能登町に古来から山岳信仰の霊場として知られる石動山にある「蓮池の水」と通じており、出るはずのない淡水が島から湧き出るようになったのだと信じられていました。

そんな虻が島が「阿無屋島(あふやしま)」と呼ばれていた大昔、石動山の蓮池に住んでいた大蛇が、夏になるとたくさんの子蛇をつれて島に遊びに来ていました。 そのことを知らずに、この島へ舟を着ける者がいると、親の大蛇が怒って、島に近づけないようにしていたため、人々は阿無屋島を「蛇が島」と呼んで恐れるようになりました。

時がたつにつれて、この泉の岩礁の囲みも富山湾に寄せる波によって浸食され、海水が流れ込むようになりました。塩水が嫌いな大蛇たちは、島に遊びに来ても泉にいられなくなってしまったため、仕方なく亀になって、姿を隠してしまったそうです。 このようなことから、人々はこの泉を「蛇が池の跡」と呼んでいるのです。
※諸説あり。

2022年5月、この「虻が島の大蛇」の舞台となる氷見市を海ノ民話のまち実行委員会認定委員長でもある沼田心之介監督が訪れ、氷見市の博物館や観光協会の皆さんとキックオフミーティングを開催。子どもたちに向けたシナリオ構成などについてさまざまな意見が交わされました。

沼田監督は「沿岸部や海のまちに伝わる民話をアニメ化して、海の学びを子どもたちに知ってもらいたいですね。富山というと、富山湾の豊かな海産資源もありますし、今回アニメ化する民話も富山湾に浮かぶ虻が島が舞台なので、とても作りがいがあるな、と思っています」と、意気込みを語りました。

ミーティング後は、虻が島を一望できる料理旅館・はしもと屋に足を運び、四代目主人の橋本卓弥さんから、かつて虻が島周辺の遊覧船の運行を行っていた頃の話を聞いたり、浜から見える島の姿を見学。また、氷見市立博物館を訪れ、当時の船の形や漁法をリサーチするなど、より良い作品つくりのために精力的な活動を行っていました。

料理旅館・はしもと屋からは、富山湾に浮かぶ虻が島など、富山の絶景が楽しめる
氷見市立博物館では、昔の漁業に使われていた道具などの展示を視察

富山湾は暖流と深海の冷たい海水が混ざり合う海域で、魚の量も種類も豊富なことでも有名。虻が島もその影響を受けて、暖地性と寒地性の両方の植物がみられたり、多くの種類の生物が生息しています。このことから富山県は、この特異性と保護の観点から、虻が島とその周辺を1965年に天然記念物に指定し、大切に守っています。そんな富山の皆さんが小さい頃から聞いていた民話「虻が島の大蛇」のアニメは、2022年11~12月に完成予定。氷見市漁業文化交流センターにて上映会を開催する予定もありますので、今から完成が楽しみですね。

share