日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

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北海道・江差町に伝わる民話「折居婆さんと鰊(ニシン)」をアニメ化!

地域の話題
2022年8月17日

2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、北海道檜山郡江差町に伝わる民話「折居婆さんと鰊(ニシン)」が選ばれました。

「折居婆さんと鰊」は、北海道の南西部にある、日本海に面した江差町が舞台。かつて「江差の五月は江戸にもない」と謳われるほど、ニシン漁とニシン加工品の交易によって繁栄を極めた街の礎となった民話です。

昔々、江差の浜に折居婆さんと呼ばれる一人の老婆が住んでいました。折居婆さんは雲を見ると雨が降ることを知り、風の吹くことを察し、土地のものは神さまのように敬っていました。そんなある年、江差の海で全く魚が獲れないことがあり、みんなが困っていたので、折居婆さんは神棚に手を合わせ祈りました。すると、真夜中にかもめ島の方から光が差したので、折居婆さんが島へ行くと、そこに一人の老翁が現れ、ニシン漁のヒントを授けてくれました。
二度に渡って折居婆さんが老翁から授かった言葉で、たくさんニシンを獲ることができた土地のみんなは、折居婆さんの家にお礼に行きましたが、その姿はありませんでした。そこで土地の者たちは祠を建て、折居婆さんの家に残されていた御神像を祀り「姥が神」として尊崇することにしました。折居婆さんが老翁から授かった瓶が瓶子岩となり、折居婆さんの家に残されていた御神像を祀る建物が今に伝わる姥神大神宮となりました。
折居婆さんは、老翁の言葉として、村人に高さが五尺三寸(約1m59cm)、目の数は63のサイズの網で漁をするよう伝え、これを固く守るように村人に言い聞かせていました。しかし、欲に目のくらんだ人々は、明治の初めの頃には大きな網で漁をするようになりました。この頃から江差の浜ではニシンが捕れなくなり、ニシンは幻の魚と呼ばれるようになってしまったのです。
※諸説あり

不思議な力で、町の人々を導いた折居婆さんを祀る祠

現在、江差町に暮らす人々は、まちの礎となった折居婆さんへ敬意を払い、姥神大神宮や瓶子岩(へいしいわ)を今でも大切に守り、祀っています。そして、教えを教訓として幻と言われたニシンの群来(くき)が復活したという言い伝えが、民話として語り継がれてきました。
また、折居婆さんが老翁と出会ったかもめ島は現在、檜山道立自然公園の特別区域に指定されています。「日本の夕陽百選」に選ばれた絶景や歴史、文化など魅力に満ちたこの島を舞台に、宿泊と食事、海洋体験が楽しめるイベント「かもめ島マリンピング~海と日本PROJECT~」が、2022年4月29日(金)~10月23日(日)の期間中、開催されていることでも知られています。

かもめ島を視察する沼田監督(右)

2022年5月、この「折居婆さんと鰊」の舞台となる江差町を、海ノ民話のまち実行委員会認定委員長でもある沼田心之介監督が視察。江差町の皆さんの案内と共に、民話にも登場するかもめ島や、折居婆さんを祀った祠といった場所を写真などに収めていました。
美しい自然が残る江差町のかもめ島に残る海ノ民話を題材としたアニメの完成は今年の冬を予定。地元の小中学生に向けた上映会なども企画されています。どんな作品になるのか、今から楽しみですね。

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