06
アニソンに合わせて「盆踊り」!
伝統を継承しつつ伝承していくカギは「踊りの楽しさ」
盆踊りコンサルタント「盆シュルジュ」
地域コミュニティが衰退する中で、日本人には馴染み深い「盆踊り」も減っているのではないか? そんな思いから「盆踊りコンサルタント 盆シュルジュ」の肩書きを持つ、鳳蝶流家元師範である鳳蝶美成師範に盆踊りの現状を伺った。
地域交流や活性化へ役割が変化 踊る曲も時代に合わせ多様に
例えば「歌垣」など、決まった日に歌と踊りを行うということは、古代からあったようです。その後鎌倉時代に一遍上人に端を発した「念仏踊り」をお盆に行ったという話もあります。でも五穀豊穣や大漁祈願の歌でも踊りますから、単純に宗教的なものだけでも無いかと思います。
さらに、盆踊りの形も円型と行列型があります。これは私の持論ですが、円型はやぐらにご先祖様の御霊を降ろして周りで踊ることで喜ばせるのに対して、行列型はご先祖様の御霊を迎えに行ってお送りする。地域によっても違いがあり、意外とシンプルに日本全体が「いっせーの」で盛り上がれる日を作りたかったというだけじゃないかと、思うこともあります。
開催数は、2018年頃の調査によると、東京だけで3000~4000件ほどらしいです。町内会の掲示板など細かく見ると切りが無いため、実数は定かではありませんが、全国で5万件ほどではないかと思われます。
盆踊りの主催は行政か商店街・町内会が多かったのですが、現在は制作会社がイベントとして開催しているものも多くなっています。地域のコミュニティが薄れて商店街も減っているため、合同開催になったところもあります。本来のハレの日というより、地域の交流と活性化という両方の意味があるのではないでしょうか。
数えることはできません、というのが正直なところです。なくなる曲もあれば増える曲もありますから。日本伝統文化振興財団では毎年民謡歌手の方々に新規で歌っていただいた新曲を必ず制作しています。また、最近は伝統的な民謡とは別に、人気のある演歌、J-POPや歌謡曲などに加え、洋楽にも振付する傾向もあります。さらに、アニメソングやご当地ソングなどもあります。
昔は各地の民謡の中に盆踊りの曲がありましたが、レコードが出てきたことで大きく変わっていきました。様々な形で盆踊りに特化した曲が出来ているのが現状です。
若者にも盆踊りの楽しさを伝える 200人のダンサーに教えたことも
一時期の民謡ブームでは、踊りの伝統にこだわりすぎたため、伝承がうまくいかなかったことがあったんです。なので、まず初めは楽しいことをやってもらい、その中で上手になりたい人はもっと上のところがあるよ、という風に、分母を増やしていけるようなやり方がいいのではないかと考えています。
今は海外の文化が入ってきてフラメンコやフラダンスなどをやっている人も多いのですが、本当はそれって昔なら盆踊りをやっていた人材なんですよ。
地元のために一肌脱ぎます、と言って盆踊りに参加してくれる若者たちが多くなれば、活気のある楽しいものになっていくと思います。実際に地方を回っていくと「盆踊りがやりたい」と言ってくれる若者がいます。「踊れる人はいるの?」と聞くと「ダンサーがいます」というので、ダンサー200人に踊りを教えたこともあります(笑)。こういう若者たちが本当は潜在的に文化を守る人たちなのだろうなと思いました。
伝承はもともとは口伝を基本に、補助的に振り付けを人の形で表して描いたりしていました。レコードにも写真で載せたりしていましたね。
今は映像が簡単に撮れるようになったので、より正確に残って伝わっていくのではと思います。誰もやっていなかったのでチャレンジしてみたのですが、初めは「踊り方を載せるなんて何事だ!」と関係者から少し怒られました(笑)。でも、まず知らないと参加できないですからね。
ファンの方々に失礼のないようにしないといけないと思い、一ヶ月ずっとTVシリーズと劇場版を見続けました。
踊りにする際には、キャッチーな振りに加えて民謡の振りを入れなくてはいけなかいので、結構大変でした。作品の中で槍を抜くシーンの動きが、ある民謡の振りに似ているところがあったので、その地域の先生の前でそれを披露したら大笑いされました(笑)。
まとめ
鳳蝶師範は「分母を大きくする」=「踊りの裾野を広げる」ため、まずは楽しさを教えるという目的でアニソンやポップスにも盆踊りの振り付けを行い、動画で公開している。今後もこの活動は続けていかれるとのこと。多くの人に日本ならではの「踊り」をぜひとも楽しんでいただきたいと思う。
SNS
鳳蝶師範のYouTubeチャンネル