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美しい音色を響かせる松が残した教えとは…。宮崎県延岡市に伝わる民話「琴ひきの松」をアニメ化!

地域の話題
2022年10月11日

2018年よりはじまった「海ノ民話のまちプロジェクト」。これは日本財団が推進する海と日本プロジェクトの一環として、日本中に残された民話を発掘し、アニメーションをベースとした親しみやすい表現で「海との関わり」や「地域の誇り」を子供たちへ伝え語り継ぐことを目的としたものです。プロジェクト発足5年目となる2022年も、日本各地から選ばれた海ノ民話が映像化されることが決定。そのうちのひとつに、宮崎県延岡市に伝わる民話「琴ひきの松」が選ばれました。

舞台は、延岡市土々呂地区にある霧島神社。その森には「琴ひきの松」と呼ばれる松がありました。なぜ、このような名前になったかというと、この松は枝が大きく、風に葉が揺れると、まるで琴を弾いているかのような音が聞こえるからでした。村の人々は、漁に行く前に必ず、その神秘的な音色を奏でるご神木に手を合わせ、海の安全を願っていました。

ある日、村の太一という少年が漁に出ていると、一艘の屋形船が浮かんでいました。美しく飾られていた船の中には、一人の娘が横たわっていまして、その傍らには、琴が置かれていました。太一は娘を陸に連れ帰り、何日も看病しました。その甲斐あって、娘は少しずつ体調を戻していきましたが、何を聞いても言葉を話すことはありませんでした。村人は「どこかの戦いに敗れた国のお姫様だ」と噂をし、「琴を一つ持って海からきたから琴姫様だ」と、彼女を琴姫様と呼ぶようになりました。

そんなある日、夜中に大地震がおき、村にも大津波が押し寄せてきました。その際、娘が自分の髪にさしていた櫛を津波めがけて投げ捨て、一心に琴を奏で始めました。すると、美しい琴の音に合わせるように津波はひいていきました。夜が明けて、娘に駆け寄り礼を言いに行った村人たちでしたが、娘は、笑みを浮かべたまま、息絶えていました。

村人たちは「琴姫様は、琴ひきの松の精だったんだ」と言って、丁寧に葬り、それからは、霧島神社の松を「琴ひきの松」と呼び、これまで以上に大切にしたそうです。
※諸説あり。

2022年6月、海ノ民話のまちプロジェクトの柴田英知プロデューサーと沼田友之介チーフアニメプロデューサーが宮崎県延岡市を訪問。「琴ひきの松」が立っていたといわれる霧島神社を訪れました。柴田さんは、歴史を感じさせてくれる霧島神社の趣ある風情に感銘を受けた様子で「現在は『琴ひきの松』はないと宮司さんからお聞きしましたが、松が立っていた社殿裏の山の頂から見える景色が、そのままアニメの作画に反映されることもあるので、作品に活かしていけたらと思います」と語り、沼田さんも「こういう話があったということを子どもたちがアニメとして観て、知っていただける作品になればいいかな、と思っています」と話しました。

霧島神社のほかにも、延岡市東海町の東海観音堂も訪れ、延岡市の歴史を肌で感じていたようでした。

「海沿いの街で地震が発生した時は、津波が来る可能性が非常に高い」という、災害への備えを後世に伝えるために語り継がれてきた民話「琴ひきの松」。アニメーションの完成は2022年冬を予定しています。どのような音で松の葉が揺れるのか、とっても楽しみですね!

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