日本財団海と日本海のまちプロジェクト

今こそ伝えたい海の民話アニメーション

インタビュー

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子どもたちの海離れの解消のために
親子でともに学んでいけるきっかけを

フリーアナウンサー、料理家、タレント
ソーシャルアクティビスト
真鍋 摩緒
まなべ まお
1985年生まれ、神奈川県出身。男児を育児中のワーキングマザー。2005年よりタレント業を開始。舞台やバラエティ番組への出演を中心に活動し、スポーツリポーター、旅・食リポート、イベントMCなどで活躍。その後、料理家として子どもたちや料理初心者に向けた料理教室や食事会を定期プロデュース。東日本大震災をきっかけに石巻での教育支援や、食育プログラム開発にも参画する。

「海のそなえソーシャルアクションプロジェクト」「子供たちの海の体験機会を守るプロジェクト」など、日本財団「海と日本プロジェクト」で実施している子ども向けプログラムに参画しているフリーアナウンサー・真鍋摩緒さん。「食×ソーシャルアクション」の企画ディレクションを得意とするソーシャルアクティビストであり、料理家、タレントとしても活躍中で、2019年4月に株式会社ママカラを設立。『「子育てが最高の思い出になる社会」の実現』をコンセプトにママ、子どもたち、家族に特化したイベント企画ディレクションやメディアコンテンツ制作も手掛けている。海と子どもたちの関わりをサポーターやツアーナビゲーターとして見守り、支えてきた真鍋さんから見た「海ノ民話まちプロジェクト」への期待について聞いた。

食べることをきっかけに学びを深める 「三項関係」を通じて子どもの発達を促す

タレント活動から教育分野というフィールドへ活動の場を広げて行った経緯についてお聞かせください。

子どもたちの生きる明日や自分たちの未来を作っていく上でのサポートや、「楽しみながらどう学び、生きていくのか」といった教育分野に対しての思いが、元々強かったんです。リポーターやMCとして活動している時も、静岡県や東北地方といった、海と関わりが深い地域での食を通じた学びを間近で拝見し、子どもたちに対して一番刺さりやすいものが「食べること」だと感じたんです。私も食べることが大好きですし、「食」をきっかけに学びを深めていくという観点からも、情報発信だけでなく、場作りのところにも展開していきたいという思いがあって、情報のリポーターから、食育やイベントの企画のお仕事をさせていただくようになりました。そして、出産を機に、子育てで同世代の子どもを持つママさんたちと一緒に過ごしながら、学びや楽しめる機会を提供したいと思って、現在の活動スタイルに徐々に移行していきました。

宮城県石巻市や静岡県で、海産物の食育に関わった中で気づいたことはありますか?

子どもたちは、生活の一部として海が常に近くにある感覚を持っていましたね。都内の子たちにとって海は体験したり遊びに行く場所なのに対して、港がある町や海岸の近くに住んでいる子どもたちにとっては、海が家族みたいな、生活の一部として溶け込んでいるという印象を受けました。石巻市雄勝町にある、こどもたちの好奇心と探究心を刺激する複合体験施設「モリウミアス」の立ち上げ初期に、食プログラムまわりのサポートをさせていただいた際に、体験授業のような形で、みんなで漁を手伝ったり、携帯端末でショート動画を撮影するといった、子どもたちが子どもたちの目線で行うプログラムも実施していました。その時、やはり都会から石巻に来ている子たちは海全体や波の様子などを撮るのですが、地元の子たちは漁に使う機械を斬新な角度で撮影したりなど、興味を持つポイントや視点が違うんだなというのを実感しました。

今の子育てには欠かすことのできない、アニメや動画といったエンターテイメントについて、どのようなお考えをお持ちですか?

私自身、ベネッセさんの幼児教育教材「こどもちゃれんじ」を息子が1歳過ぎぐらいからスタートさせているので、しまじろうはうちの息子のカリスマですね(笑)。私は、子どもの成育に必要な認知発達や発達心理学、食との関わりなどを伝える「こども成育インストラクター」の資格を取得していますが、一般社団法人 日本こども成育協会の理事で教育番組『しまじろうのわお!』を監修されている沢井佳子先生も、映像はおうちの方と一緒に視聴すれば、学習に役立つものが多くあり、時間を制限すれば大いに見せて良いと話していらっしゃいました。そしてママやパパ、おじいちゃんやおばあちゃん、先生など愛着関係のある大人など「子ども・そばにいる大人・映像」という3つの点をつなぐ三角形(三項関係)で、同じものを見ながら「これってこうだよね」とか「これはどう感じた?」などコミュニケーションを行うことが、子どもの認識をはぐくむには必要と学びました。
もちろん、家事をながら「ちょっとアニメや動画を見ていてね」というのもOKなんですが、その時も、アニメの音を聞きながら「○○ちゃん、こうこうこうだね」と声を掛けてあげたり、2人で一緒に見て「これってこうだよ、こうだね」って言いながら一緒に共有する関わり方を、お母さんたちにはお薦めしています。言語の学習は、何かを一緒に見聞きする人がすぐそばにいて、応答してくれることから始まります。

ご自身の子育ての中で「三項関係」でのコミュニケーションの大切さを実感したエピソードはありますか?

息子が6歳になりまして、図鑑にものすごく興味が出てくる時期なんですよね。海の生物をはじめ、危険生物や動物、恐竜といった図鑑を網羅しているのですが、そこにドラえもんが解説してくれるDVDが付いているんですね。リアルな映像と一緒に、生き物の生態系などを教えてくれるのですが、紙面で見た写真が映像として動き出して、リアルな動きと映像が情報として入ってくるので、息子の記憶にしっかりと刻まれているんです。今では、図鑑に載っていることを私に教えてくれる、という状況になっていますね。やはり、アニメーションをはじめ、映像が語りかけてくれるというスタイルが、自分で情報をキャッチして、それを理解し、考えるというところまで進めてくれる、いいコミュニケーションになるんじゃないかなと思っています。

こども成育インストラクター、そして子育て中のママとしての視点から「海ノ民話まちプロジェクト」についてどのように思われますか?

小さい子どもたちにとっては難しい言い回しや土地の名前などもあるとは思いますが、アニメーション自体がとても可愛らしいので、保護者の方や先生方が分かりやすく伝えてあげることによって、情景でアニメに込められた教訓などを覚えてくれると思います。子どもたちは、まず最初に愛着を感じるような絵とか映像の楽しさから始まって、情報がその後から付いてくるという段階を踏んで作品を理解していくだろうな、と感じています。ある程度の年齢に達したお子さんと一緒にアニメを見て、ご家族で作品の舞台となった町を訪れた際に「ここがあのとき見たアニメの舞台なんだよ」「あれがそうなんだ!」いう会話を交わすことで、より海に対しての意識や思いが高まっていくと思います。
日本財団「海と日本プロジェクト」の海野光行常務理事が、子どもたちの海離れというところが「海ノ民話のまちプロジェクト」の出発点であり、大きな課題だよね、とおっしゃっていました。でも、その子どもたちの親となる私たちぐらいの世代でも、海に対しての思い出が少なくなってしまっているんですよね。海でさまざまな体験をする機会が少なくなり、その結果、知識不足が原因で海での事故が増えてしまっているそうなんです。確かに海に行った経験が少ない分、危険なことが分からないから回避するすべがない。それだったら最初から行かないという選択をされている方が増えているな、と感じています。そんな中で、アニメで「海とはどういうものなのか」「どのような気象現象になった時にどういう行動を取るべきか」ということを親子が一緒に学ぶことができるので、母親としてはとても子どもにも伝えやすいな、と思っています。勉強ではなくて、お話を一緒に楽しむことできっかけが作りやすいので、そういった意味では周りにもお薦めしやすいですし、「このアニメ楽しいね」と子どもが言えば、「じゃあ今度、ここへ行ってみる? この場所でどんなことを知られるかな」という体験に繋げていくためのフックになりやすいコンテンツだなと感じています。

今後の「海ノ民話まちプロジェクト」に期待することはありますか?

民話は、教訓や注意喚起など、いろいろな理由で生まれて語り継がれていることが多いとは思うんですけど、そのお話が伝わる町の歴史など、バックグラウンドもちゃんと詰まっているものなんですよね。その積み重ねを教育という観点だけではなく、体験の部分まで広げると、エンターテイメント的な楽しみ方につながるのかなと感じました。そして、アニメはとても可愛らしい絵柄の作品が多いので、読み聞かせができる絵本もあると、より楽しめる幅が広がるんだろうな、と思いましたので、ぜひ絵本の出版もお願いします!

まとめ

「海ノ民話のまちプロジェクト」の母体となる、日本財団「海と日本プロジェクト」にも長年関わり、海と子どもたちの関係性や学びの重要性を肌で感じてきたという真鍋さん。子育て中のママという観点から「海ノ民話のまちアニメーション」への期待を語ってくれたことで、本プロジェクトが担い、つなげていくべき役割を再確認することができた。

2023年3月5日公開、2024年3月19日再掲載
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